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山中漆器

山中温泉の地図 山中漆器の産地は、北陸石川県加賀市山中温泉にあります。

山中漆器の歴史

山中漆器の歴史 山中漆器の歴史は古く、安土桃山時代の天正年間(西暦1573-1592)に木地師の集団が、山中温泉の上流約20kmの真砂という集落移住したことに始まります。
その後、江戸中頃からは会津、京都、金沢から塗りや蒔絵の技術を導入して木地とともに茶道具などの塗り物の産地として発展をしてきました。

山中漆器・木地轆轤(ろくろ)挽き 山中では、今も漆器づくり、木地作りが盛んに行われており、木地轆轤(ろくろ)挽きの分野では、職人さんの質・量とも国内トップの位置にあり、縦木取りをはじめとする独自の木地挽物技術には他産地の追随を許さぬものがあります。そしてここで生産された木地は、日本各地の塗り物の産地に提供されています。

石川県指定無形文化財「山中木地挽物」

「山中木地挽物」は、芸術上価値が高く、工芸史上重要な地位を占め、かつ地方的特色が顕著な木工芸の技術であり、無形文化財に指定しその保存を図ることが必要であるとし、平成22年4月2日に石川県指定無形文化財に指定されています。

詳しくはこちら→山中木地挽物(石川県のHP)

山中漆器の特徴

山中漆器の特徴 山中漆器の特徴の1つに、木目の間が透けて見える「薄挽き」や細かい縞模様を作り出す「千筋」、「象嵌(ぞうがん)」等の「加飾挽き」などがあげられます。加飾挽きは、木地師自身が作った独自の鉋(かんな)で挽目をほどこす技術で、千筋、平筋、盛筋、平子筋、盛子筋、かつら筋など何十種類もあります。いずれも、熟練職人による轆轤挽きの巧みな技から得られるものです。

山中漆器が完成するまでには、大きく分けて木地・下地・上塗・蒔絵の四工程を経ます。ほとんどの制作行程が手作りのため、原木の乾燥から完成までに要する時間は長いもので1年以上かかります。

また、木目の美しさを表現するために、木地に生漆をすり込んでは拭き取るという作業を何度も繰り返し仕上げる「拭漆(ふきうるし)」は、加飾挽きにより美しくデザインされた器をより丈夫に長持ちさせ、美しく見せる技術として山中漆器を特徴づけるものの1つです。

蒔絵

琥珀に蒔絵をほどこしたペンダントトップ 山中の蒔絵は、加賀藩の藩政時代に京都や会津、そして金沢の加賀蒔絵などの技法を巧みに取り入れ山中独自の深みを作ってきました。
器や茶道具などにほどこす蒔絵の美しさも山中漆器の特徴の1つで、平蒔絵・研ぎ出し蒔絵・高蒔絵などの技法により見事な蒔絵ができあがります。特に茶道具の棗などに施される研ぎ出し蒔絵・高蒔絵の技術に非常に優れ、数々の名品を生み出して来ました。

さらに詳しく→山中漆器と蒔絵

山中漆器の制作工程(真塗り)

木地挽き

1.木取り

漆器の木取りの方法として縦木取りと横木取りがありますが、山中漆器では縦(竪)木取りを採用しています。
縦木取りで作ったお椀は木が上に向って成長している方向を向いています。つまり、年輪に対して垂直ですので強度があって歪みや収縮に強いのです。それでは全てのお椀を縦木取りにすればいいのですが、大きなデメリットがあります。木の芯部が使えないなど横木取りよりも無駄になる部分がとても多いことや、木取り部分の選定などが必要で、作業効率が悪くなるためです。
職人の手によって繊細な轆轤挽きが行われる山中漆器では、木の強度はとても重要になりますのであえて効率の悪い縦木取りにこだわっています。 ちなみに、木材は乾燥すると大きく歪みますが、山中漆器では縦木取りした木を3年から5年にかけてじっくり乾燥させます。こうして歪みに強く、「薄挽き」など繊細な轆轤挽きに耐える丈夫な木地が生まれます。

2.荒挽き・乾燥

木取りした木を仕上がり寸法より6〜9mm程度大きめなサイズになるまで轆轤にかけます。そしてそれを含水量が8%以下になるまで乾燥室で乾燥させ、その後12%程度まで戻す作業を40〜60日程度かけて行います。そうすることにより、木の収縮をとめて変形を少なくします。

3.中荒挽き

養生された仕上がり寸法より3mm程度大きなサイズになるまで中荒挽きを行い再び30〜50日養生させ、含水量が10%になるくらいまで乾燥させます。これにより空気中の乾湿による収縮がほとんど停止した状態になります。

4.木地の仕上げ

乾燥した木地に轆轤をかけて仕上げを行います。山中漆器の木地挽き職人は、木地を挽く時に使う専用の刃物「カンナ」を職人自らが鋼を鍛造して作っています。そのため職人ごとに刃の形状が微妙に違い切れ味や使い勝手にもそれぞれこだわりがあります。木地を挟む台座も全て職人の手作りです。

木地固め

5.木地固め

水分の少ない透素黒目漆を希釈し刷毛塗りし、木地の木目の中まで漆を染み込ませて木地繊維を締め固め木地の狂いを防止します。

6.布着せ

見付部分、縁部分、高台部分に麻布を糊漆で貼り補強し、木地の狂いやヤセを防ぐと共に強度を上げます。

7.布ざらえ、布磨き

乾燥後、布の角や重なり部分、ケバ立ちなどを刃物で落とし平滑に布をそろえた後、荒砥石やサンドペーパーで布面を空研ぎし糊漆や麻布の段差を無くします。

8.惣身付け、惣身付磨き

布と木地総体に檜箆で糊漆と欅の粉を練り合わせたものを付け、目摺りした部分と布磨きした部分の段差を無くします。乾燥後、木地全体を平滑に研ぎます。

9.二辺地付け、二辺地研ぎ

荒い地の粉と漆をよく練り合わせた二辺地を、檜箆で木地全体にむらなく付けます。乾燥後、荒砥石で空研ぎし平滑にします。

10.三辺地付け、三辺地研ぎ

二辺地より細かい地の粉と生漆でよく練り合わせた三辺地を檜箆で付け、乾燥後、細かめの砥石で研ぎ清水でよく拭き取ります。

11.錆地付け

砥の粉を生漆でよく練った錆地を、檜箆で全体に均一に薄く滑らかに付けます。錆地付けは、その工程が20以上にも及び10種を超える檜箆などを用います。伝統漆器で一番手間の掛かるかなめの部分です。

12.錆地付水研ぎ

砥石などで水研ぎしよく拭き取り、段差を無くし全体が平滑になるようにします。

塗り

13.下塗り、中塗り

薄い下塗り、研ぎの後、黒素黒目漆を刷毛で全面に薄く塗布し表面を平滑かつ細かにします。

14.中研ぎ

乾燥後、上塗り漆の密着をよくするために駿河炭などを用いて平滑に研ぎます。

15.上塗り

乾燥後、上塗漆を粒子を細かくしたり細かな埃などを取り除くために、漉し紙で数回漉して、埃、塗りむら、刷毛目に注意して塗り上げ、回転する風呂棚で乾燥させます。

蒔絵

17.蒔絵 - 置き目

美濃紙に書いた下絵を焼漆、石黄でなぞり、それを漆器面に写し取ります。

18.蒔絵 - 完成

漆で文様を描き、金銀粉を蒔き、更に加工研磨して蒔絵を仕上げます。


山中漆器の制作工程(拭き漆)

木地挽き

1.木取り

漆器の木取りの方法として縦木取りと横木取りがありますが、山中漆器では縦(竪)木取りを採用しています。
縦木取りで作ったお椀は木が上に向って成長している方向を向いています。つまり、年輪に対して垂直ですので強度があって歪みや収縮に強いのです。それでは全てのお椀を縦木取りにすればいいのですが、大きなデメリットがあります。木の芯部が使えないなど横木取りよりも無駄になる部分がとても多いことや、木取り部分の選定などが必要で、作業効率が悪くなるためです。
職人の手によって繊細な轆轤挽きが行われる山中漆器では、木の強度はとても重要になりますのであえて効率の悪い縦木取りにこだわっています。 ちなみに、木材は乾燥すると大きく歪みますが、山中漆器では縦木取りした木を3年から5年にかけてじっくり乾燥させます。こうして歪みに強く、「薄挽き」など繊細な轆轤挽きに耐える丈夫な木地が生まれます。

2.荒挽き・乾燥

木取りした木を仕上がり寸法より6〜9mm程度大きめなサイズになるまで轆轤にかけます。そしてそれを含水量が8%以下になるまで乾燥室で乾燥させ、その後12%程度まで戻す作業を40〜60日程度かけて行います。そうすることにより、木の収縮をとめて変形を少なくします。

3.中荒挽き

養生された仕上がり寸法より3mm程度大きなサイズになるまで中荒挽きを行い再び30〜50日養生させ、含水量が10%になるくらいまで乾燥させます。これにより空気中の乾湿による収縮がほとんど停止した状態になります。

4.木地の仕上げ

乾燥した木地に轆轤をかけて仕上げを行います。山中漆器の木地挽き職人は、職人それぞれが独自に作った刃物を利用してします。木地を挟む台座も全て職人の手作りです。

木地固め

5.木地固め

水分の少ない透素黒目漆を希釈し刷毛塗りし、木地の木目の中まで漆を染み込ませて木地繊維を締め固め木地の狂いを防止します。

6.めすり

縦木取りした木地の導管は立てに突き抜けた状態になっていますので、この導管を埋める作業を行います。砥の粉と漆を混ぜ合わせた下地漆を木目が埋まるように一つ一つ丁寧に塗り込む作業を行います。

7.研ぎ

めすりの作業後、下地漆が固まった時点で、余分な部分を研ぎ落とし最後に表面が均一になるようペーパーで表面を整えます。この作業が最終的な仕上がりの良し悪しに大きく影響します。

塗り

8.塗1回

漆刷毛による1回目の塗り作業を行います。刷毛で漆を塗り込み、直後に余分な漆を拭き取ります。
塗ったものは、温度10℃以上、湿度70%前後になるように調整した風呂棚と呼ばれる棚に入れて約1日乾かします。漆の乾きには湿度の調整が特に重要、乾燥した状態では漆は乾きません。

9.塗2回以降

2回目の漆塗りの作業です。1回目と同じく漆を塗って拭き取り、風呂棚に入れて乾かします。一般的には、塗の作業をこのあと1回行って合計3回で仕上げますが、商品によっては4〜10回行うものもあります。

荒挽き、木地挽き、塗りは全て専門の職人が分業で行っています。その全ての人々の職人技を結集して一つの山中漆器が完成します。


山中漆器における木地加飾挽きの技法

山中漆器の特長である縦木取りした材料から作る椀木地は、木が育つ方向に逆らわずに加工できるため歪みが出にくいです。このため、薄挽きや蓋物などといった精巧な仕上げも得意です。加飾挽きとは、木地を挽く際にその表面に刻みつける装飾的な模様のことで、円状と渦状の二系統あり様々な工夫を加えることで無限の模様を生み出すことができます。

千筋(鉋筋) せんすじ(かんなすじ)

一本ずつ勘で等幅に細い幅の溝を挽く

千筋(小刀筋) せんすじ(こがたなすじ)

刃先が二股の木地屋小刀を用い、一方の刃先ガイドにもう一方の刃先で溝を削ることで正確に等間隔に筋を入れる。

平筋 ひらすじ

丸いくぼみの形状に合った刃物で、順に溝を挽く

盛筋(児雷也) もりすじ(じらいや)

丸い山の形状に合った刃物で、順にかまぼこ型を作る。

平子筋 ひらこすじ

千筋と平筋が交互になった筋

盛子筋 もりこすじ

一度盛筋を作り、一つ置きに平にして千筋を入れる。

かつら筋

一度盛筋を作り、稜線部分を平に削り取る

壇筋 だんすじ

小刀筋の要領で等間隔に目印をつけ、順に階段状にしていく

広糸目筋 ひらいとめすじ

小刀筋の要領で等間隔に目印をつけ、一本ずつ平に溝を広げる

子持筋 こもちすじ

幅広の広糸目筋をつくり、溝の間に千筋を入れる

籠目筋 かごめすじ

一度千筋を作り、彫刻刀で籠らしくなるように間引く

刷毛目筋 はけめすじ

刷毛目に似せてランダムに筋を入れる

荒筋 あらすじ

荒々しくランダムに筋を入れる

渦筋 うずすじ

中心から外側に向かって一気に渦模様をつける

星筋 ほしすじ

弾性のある鉋のバネを利用して、破線状の連続模様をつける

鱗筋 うろこすじ

弾性のある鉋のバネを利用して、点状の連続模様をつける

稲穂筋 いなほすじ

弾性のある鉋のバネを利用して、中心からうねるように放射状に刻み模様を入れる

松鞠目筋 まつまりめすじ

松ぼっくりに似せた模様

模様筋 もようすじ

木地の中心軸をずらして轆轤に固定し、様々な加飾を組み合わせる

遊環 ゆうかん

同一の木材から自由に動く輪を挽き出す

銀線象嵌 ぎんせんぞうがん

溝を削って金属線をはめ込む。温湿度による木の多少の変動に金属があわせて動くように金属線が蛇腹になっている。

乱筋 らんすじ

渦模様を自由に重ねる


(参考及び引用)
山中漆器連合共同組合HP
石川県立山中漆器産業技術センター


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